コマ、リコーダーと、パラパラ
とある秋田県の小学校。休み時間。廊下では、階段の踊り場で群れる男の子たちの歓声が響いている。お気に入りのコマを手に集まる少年達にとって、この時間の踊り場は戦場と化している。練習を積み重ね、今日は負けんと手の汗をぬぐい、自分のコマを思いっきり打つ。相手のコマを激突し、回転を止めることができれば勝ち。さらに階段の下まで弾き飛ばせれば上等だ。真剣なまなざしで大戦に挑むこの男の子達の中に一人、将来コマを芸とし、舞台で披露する事になる子がいた。
長野県、箕輪町にある小学校。放課後。誰もいない音楽室で一人熱心にリコーダーの練習をしている女の子がいる。どんな指使いをしてもリコーダーが手から滑り落ちないよう、本体を支えるピースがその子の指に、はめられている。できなかった曲がスラスラ吹けるようになるのが楽しくて、自主的な居残り練習と、家での練習を毎日積み重ねるうちに沢山のジブリの曲をこなしていった。この、楽器を覚えるゆるぎない集中力が、後にはギターや胡弓、篠笛にまで広がっていくのであった。
掃除の時間後の自由時間。東京の小学校。使われていない教室で、せっせと何かを描きとめている女の子がいる。流行のコギャルに憧れるその子の両腕には、ジャラジャラと音をたてるブレスレットがふんだんに重ねられていた。現役ギャルの姉を持つ友達から教わるパラパラの数々を、一生懸命覚えようとしているのだ。踊りの動きを細かく分析し、絵譜におさめる習慣が、大人としてお神楽や伝統芸能を学ぶ時に役立つとは、さらさら思っていもいない。
違う時代、違う土地で育った三人。それぞれの一見無縁の趣味が「舞台」という場で活用され、三人の接点となるのだ。
長野の山奥で伝統芸能を学んでいる。と言うと、家族や友達でさえ「どうしたの突然」と言う様な表情を浮かべる事があるが、振り返ると子供時代に今の自分の面影が見える事が沢山ある。好みや特技、夢中になってやった事は決して無駄ではない。
それがどんなにくだらない事でも。
例えそれが「変顔」であっても!
信じて頂けないのなら今年の「和来座」を見に来て頂きたい。その証拠をお見せします。
一人っ子の私はよく全身鏡の前で正座をし、耳を動かしたり、片目より目やまぶた返し、首横振りなど、さまざまな技を練習して楽しんでいたのです。その要素が今年の和来座で生きているからびっくりです。どのようにかって?それは見てのお楽しみです!