忘れない日
2021年12月「和力xびかむ」公演
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11月末、和力・紅打逃げのオンライン配信、無事終演!
と、思うが早いか、次は「びかむx和力」公演が待っていた。
ここ地力塾では時間の流れ方が一般社会とは少し違い、曜日とは、ほぼ無縁の世界。代わりに仕事の量や休みの日は、舞台や出演で区切られている。あの公演まで何日だから、それまでに〇〇を作り上げる事に全集中。その企画が大きければ大きいほど、実は週末だったり祝日だったりする事に全く気づかないのは日常茶飯事。いつも傍らに握り締めている手帳が無ければ、もう大変。フワフワと無次元の世界へ迷い込んでしまうかもしれない。
そんな私でも、ちょうど「びかむx和力」公演があった12月2日は、決して忘れない日。
早くも5年前、事故で亡くなった友人二人の命日なのです。
才能溢れるアーティストだった二人は、各々の表現や夢へ向かって全力、まっしぐらな人たちだった。ニューヨーク育ち特有の毒舌を撒き散らしながらも、いつも仲間を仕事に巻き込み、「良いじゃん、やれよ。」と、戸惑う背中を押してくれる、いい奴。
暑い夏の日、ひんやり冷たい川に本当は飛び込みたいのに、いつまでも岩の上でモゾモゾしている様な私に、その日、突然途切れた彼らの行路は、「やれよ。いま しかないんだぞ。」と言う様に、ずっと夢見ていた帰国と弟子入りを決意する、最後の一押しをしてくれた。
「びかむx和力」公演の日、今こうやって舞台に立つ自分がいるのも、あの人達のおかげだな、と思いながら、袖から師匠や先生等の芸に目と耳を傾けていた。
今回、見稽古をさせて頂けるチャンス!と思い、
「あの音はどんな手で出してるんだろう。」「ここではどうやって動くんだろう。」
感じる、と言うより、分析する様な目線でほとんどの公演を観ていた。
でも、アンコール曲「あいをよる おもいをつむぐ」に入ったとたん、重なる楽器の音色と坂田美子先生の澄んだ歌声に乗って漂う歌詞は、いつの間にか、どこかにしまっていた感情を引き出していた。
たいせつな人を亡くした夜は
泣いて泣いて 泣き明かしたよ
あえなくなるとわかっていたら
もっと素直になればよかった
見上げれば 涙を浮かべて しかってくれた
あなたの笑顔がみえる
あなたと会って あなたを感じ
あなたがくれた 今日の日に ありがとう
あなたと会って あなたを感じ
あなたがくれた 今日の日に ありがとう
あれ…
この気持ち、もう整理したものだと思ってた。
終曲と同時に目尻を拭いた。
その夜、自分でも気付いていない気持ちが埋まっていた事。そして音楽によってそれが、いとも簡単に湧き上がった事について、考えていた。
今までは、ただ好きな曲を気持ちよく聴くことしか考えていなかった。でも実は音楽は、聴く人が入り込める世界を作ってくれている事に気付いた。やり場のない気持ちや、出し方のわからない気持ちを、素直に出せる空間を作ってくれている。
「紅打逃げ」と「年末」と言う大きな節目を機に、新しい手帳を備え、次の目標を考える今日この頃。
まだ先は遠いけど、いつか誰かが心地よく入れる世界をつくれる様になりたい。そんな夢を膨らませています。
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いつも投稿の内容や時間にムラがあるのにも関わらず、一年間ご愛読いただきありがとうございました。
来年も頑張って書きますので、引き続きよろしくお願いいたします!
どうぞ良いお年をお迎えくださいませ。