カモメが飛んだ
. . .
先週はお盆休み。いつも連休前になると「やりたい事リスト」を作る。今回もいつも通り達成できない数の項目が並んだが、その中でも一つだけ絶対にやりたい事があった。
それは、スタンプ作り。
鉛筆で描いた絵をゴム板に移しチマチマと彫っていくと、日常のいろんな場面で活用できるスタンプが誕生する。版画は前から好きで、数年前は和力のTシャツもゴム板で作らせていただいたが、今回は小さなスタンプが作りたかった。
というのも、最近葉書や一筆箋にハマっているから。メールやラインはどうも緊張してしまい返信するタイミングを逃してしまう私でも、これなら楽しみながら人と連絡をとれるかも、と思ったのがキッカケ。季節に合わせて柄を選んだり、自分で絵を描いたり、押し花を忍ばせたり…メールでは捉えきれない工夫とコミュニケーションが楽しめる。
初めは仕事でお世話になっている方に何か送る時、自分がお稽古している楽器の柄の一筆箋を添えられたら楽しいな、という思いから始まったスタンプ作り。次は遠くに住む友人・家族に送るハガキで使う”AIRMAIL"スタンプが欲しくなり、最終的には特に使い道はないけれどミニチュア版画を作ってみたくなったので、理由もなしに鳥の絵を彫ってみる事にした。
以前話した様に私は海の周りで育ったので、写真を見なくてもカモメの姿ははっきり思い浮かぶ。そうそう、羽がスッと細長くて体は滑らかなライン。
掘りながら口ずさむは
♪
カモメが飛んだ〜
カモメが飛んだ〜
どこで拾ったのか、子どもの頃から好きな歌。連休は大好きな細かい手作業を心ゆくまで堪能した。
しかしお盆が明けると、「まん防」「時短」「緊急事態」という言葉が飛び交う様になり、あれよあれよと言う間に仕事のカレンダーがまた、ビンゴ紙の様に斜線だらけになり始めた。お師匠さんの携帯が鳴ると「もしかして…」と、隣の部屋で電話の対応をするお師匠さんの顔色を伺ってしまう。
ようやく舞台の仕事が戻ってきたと思ってたのに…コロナのおかげで「カモメ」を「仕事」に置き換えたしょうもない替え歌を口ずさむ有り様だ。
はぁ。仕事がなければ「お世話になりました」の一筆箋が送れないじゃないか。出番を待つスタンプ達に目をやる。自信があった割には、この鳥カモメに見えないよね。この辺りでよく見るハシブトガラスかな。
♪
カ〜ラ〜ス〜、なぜなくの〜
仕事がとんだから〜
あ〜あ、またやってしまった。
出演で外出する機会が減ったせいか、最近ここではスモークチーズ作りに力が入っている。名付けて「地力塾 燻製工房」。味はもちろん、パッケージも真空パック機を購入するなど徐々に本格的になり、ラベルも印刷する代わりにスタンプで作る事になった。舞台に込めたいこだわりが、今はこっちに向かっているのだろうか。
今夜もラベル用のデザイン案を描いている。カモメの歌が頭を離れない。
替え歌は好きだけど、もう、飛ぶのはカモメやカラスだけにして欲しい。