気付く頃には
今日は全てがキラキラと輝いていた。
「昼神温泉 冬の陣・和来座」という一ヶ月間続いた公演と、その後片付けもおととい終わり、今日は久しぶりの休日。空は青く、すっきりと晴れていて、寒さがまだ少し残る日にまぶしく照るお日様が、明かりだけじゃなく春特有の穏やかさも空いっぱいに広げてくていた。
なんだか久しぶりにお天道様に会った気がした。
それもそう。長野に着いた日から一昨日まで、一ヶ月間毎日二回公演されていた先生の舞台のお手伝いをしていて、昨日片付けが終わったばかり。企画が続いた間は私たちの生活リズムも行動範囲も、舞台が中心となっていたため、日中外に出ることはあまりなかった。
枯れた花が水を吸い上げるように体が日差しを求めている感じがしたので、そのままボーッと日を浴びていると、真上を飛んでいたトンビが同感しているかのように「ピーヒョロロロロロー」と気持ちいい鳴き声を響かせてくれた。
朝の寒さも和らいできたため、今日からまた稽古場のぞうきんがけが始まる。バケツに水をくもうと敷地のおもて側へ行くと、赤土がむき出しになっている斜面の上の方で何かがキラキラと光っている。近寄って見るとたくさんの霜柱がドサっと崩れたらしく、宝石のように光を反射している。
そして向かいには雪掛かった「日本アルプス」が綺麗にそびえ立っていた。
少し暖かくなったと言っても、さっき水をくもうとした外の蛇口からは2センチくらいのツララが垂れてキラッと光っていたくらい。雑巾掛けが終わると足は冷え切っていた。居間に戻って冷たい足を窓から入ってくる日光にちょんとかざすと、すぐに温もりが染み込んできて、なんとも優しい気持ちにしてくれる。
姉弟子は隣でコーヒーを飲みながら、時折本のページを静かに ペリッ ペリッ とめくっている。特に最近は忙しくて常に動いていた彼女がこうしてゆっくりしている様子を見ると、なんだか余計に和んで幸せな気持ちになる。
私たちの生活はこれで普段に戻っていく。
春の気配がちらつく最近、「変化」っていうのは気付く前にもう始まっている、そんなものなのかなぁって感じています。
まだ寒い朝もあって「春だ!」とは言えないけど、畑を見渡す木の枝は、先っちょのつぼみを少しづつ膨らませている。このつぼみが花となり、春らしい景色が見える前に、春の流れはもう始まっているのだ。
初めて私の先生・加藤木朗さんにアメリカ・ワシントン州でお会いした時、実は一緒にいらしてた和力の小野越郎さんの津軽三味線のワークショップも受けていて、CDまで買っていたんです。当時はなんとなく惹かれて参加したものの、三味線を始める気などなかった。が、長野に来てからご縁のおかげでストンストンと話が進み、なんと三味線が手に入り、その小野さんご本人にお稽古をつけていただく事になったのです!自分は三味線がやりたいんだ、と気付くずっと前、あのワークショップに参加しようと思った時にもう流れができていたのかなぁ…なんてぼんやり思ったり。
とにかく楽しみなんです!
春と、三味線の、訪れが…